遷延性意識障害における損害賠償金について
1 遷延性意識障害とは
遷延性意識障害(せんえんせいいしきしょうがい)とは、疾病・外傷により種々の治療にもかかわらず、3か月以上にわたる、①自力移動不能、②自力摂食不能、③糞便失禁状態、④意味のある発語不能、⑤簡単な従命以上の意思疎通不能、⑥追視あるいは認識不能の6項目を満たす状態にあるものをいいます(脳神経外科学会1976)(日本救急医学会ウェブサイトより引用)。
参考リンク:一般社団法人 日本救急医学会・遷延性意識障害
いわゆる植物状態のことをいいます。
2 後遺障害等級と損害賠償項目
遷延性意識障害の後遺障害等級は1級が認定されます。
主な損害賠償項目は以下のとおりです。
⑴ 治療費
いわゆる寝たきり状態のため、高額になることが予想されます。
⑵ 入院雑費、入院付添費
入院雑費や入院付添費については、日額の基準が決まっております。
⑶ 傷害慰謝料
事故日から症状固定日までの期間に応じて、算定されます。
⑷ 後遺障害慰謝料
1級が認定されている場合には、2800万円(赤本基準)です。
示談交渉段階では、相手方からは、この金額の8~9割で提示されることが多いです。
⑸ 休業損害
通常、事故日から症状固定日までの期間分が賠償されます。
⑹ 後遺障害逸失利益
逸失利益の算定式は、
事故前の年収×100%(1級労働能力喪失率)×労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数
です。
遷延性意識障害の場合には、健常者と比べて、生活費がかからないということで、生活費を控除すべきだと主張されることがあります。
また、植物状態の方の推定平均余命は10年程度しかないなどと労働能力喪失期間を短く主張されることがあります。
しかし、これらの主張は、多くの裁判例では、排斥されており、通常の後遺障害逸失利益の場合と同様に算定されています。
⑺ 介護費用
介護費用については、
介護日額×365日×平均余命に対応するライプニッツ係数
で算定されます。
ここでも、いわゆる植物状態の人間の推定平均余命は、そこ通常人の平均余命と比べて長くはないと主張されることが多いのですが、多くの裁判例では、通常人の平均余命と同じように算定しています。
⑻ その他
その他の項目については、ここでは割愛します。
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